但馬北部の自然を考える報告会・シカの親子に感じること<4/4>
昨日までのブログの続きです。最後は豊岡市鳥獣対策員(ハンター指導員)の岡居さんからの報告がありました。私は岡居さんの講演を聴くのは2回目なのです。豊岡の職員になる前は、アメリカの先住民族と一緒に猟師をしながら、シカの皮などで工芸品を作ってはった、生粋のマタギ(猟師)です。
先に講演された徳島県の例を上げ、「豊岡市が課題にしている2つの問題が四国が解決されている。行政は一度こけないと動けない。生息数の違いがあるかもしれないが。行政やボランティアが一気に連携してスムーズに動けている」点を評価なさってました。
豊岡市は兵庫県の中でも先進的な取り組みとなる「シカ捕獲専任班」を設けました。目に見える成果も出てきたそうです。特に住民の方々と「自分たち受害者は何が悪かったのか、何ををすればいいのか」という話をすることが増えてきたそうです。現場にいないとわからない問題のあぶり出しと具体的な対策案を示すことが自分の仕事、と岡居さん。
今の目標は、捕獲班の捕獲数をあげること。鉄砲での捕獲が進むと、隣の山へ移動して群れが拡散する恐れがあるので、迅速に動けるようにしているそうです。行政にできることは限られてくるため、住民による捕獲への積極的な協力も必要だそうです。
豊岡市に割り当てられる捕獲頭数は5000頭で、銃による捕獲より罠による捕獲の方が10倍も多い。特に猟友会の罠班が大活躍しているそうです。銃による捕獲では外部の民間駆除業者も参入しているそうです。そのため、既存の捕獲団体との土台作りは必要だとおっしゃっていました。
鹿駆除専従班の暮らしは大変厳しいそうです。捕獲金額は鹿一頭あたり8000円から12000円に引き上げられているのですが、罠の材料代で4分の一が飛んでいくそうです。また、2〜3日に1日、捕獲の仕事があるそうですが、険しい山の中に入っていくため疲労が蓄積してとても辛いそう。歩合制で、かつ、猟友会のいる冬は、プロの我々は自主禁猟のため失業状態になってしまうとのことで、安定収入につなげることも急務なようでした。来年度以降は、罠での捕獲も増やす予定だそうです。
岡居さんは、鹿の親子の話を通じて、命を頂くことの意味と自然の有り様について私たち一般住民にわかりやすく説いて下さいます。むやみやたらと捕獲するので無く、群れをずっと1年観察し、弱ってきた鹿だけを捕獲し、群れも先住民も共存してきた中でマタギをしてきた岡居さんだからこそ、淡々と話すその口調から、今の鹿狩りといいましょうか、シカ駆除に対する複雑な心境も垣間見えました。
岡居さんは、6月の環境フォーラムの時と同じく、シカの親子愛の話をして下さいました。シカは親子愛がとても強いのだそうです。一回の出産で生まれるのは1頭。その一頭が子離れするまで、雌と一緒に生活します。母シカが狩猟で致命傷を負い、山を駆け上がれず死んでいくとき、陰から見る子供のシカは本当に悲しい声でピーと声を上げて、森の奥深くへ消えていくそうです。それは逆パターンでもおなじことだそうです。
猟師の中には、致命傷を一発で与えることができず、中途半端に生かしてしまう人もいれば、まだ、完全に死んでもいないのに、狩ったことを示す歯を平気で抜いてしまう、そういう「命の尊厳」をまるで考えない猟師が居るそうで、捕獲するなら、できるだけ死ぬ時間を短く、そうして死の尊厳を守って欲しいとおっしゃっていました。
最近は特にメスの頭数が増えすぎて、群れの中で雄の交尾が間に合わず、普通5−6月に出産するものが遅れ気味となり、生育途中のシカが冬を越せなくなってきているのか、シカが少なくなっているようです。一方、オスは男性ホルモンのテストステロンが下がる3月に通常は毛が生え変わるそうですが、それが早くなっていて、身体も小さくなってきているので、何か遺伝子異常がおこっているのでは、と危惧していました。シカが感じる冬の厳しさの中で、寒の戻りが最も影響があって、自然減になるそうですが、頭数が減った成果が見え出した時期が最も注意しなければいけないそうです。というのも、頭数が減ると、充分えさにありつけるようになり、そうすると栄養が豊富になり一気にシカが増えてくるためだそうです。
春までは講演活動をされているという岡居さん。機会があればぜひ、岡居さんのお話を聴いてください。そして、シカと人間が共存できるようにするにはどうすればいいのかを一人一人が考えて頂きたいと思います。
但馬北部の自然を考える報告会・シカの環境問題< 1 | 2 | 3 | 4 >
今井 ひろこ
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