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但馬北部の自然を考える報告会・香美町のシカ被害<2/4>

      2015/02/20

昨日からお話している、先週14日(土)に開催された「但馬北部の自然を考える報告会」の続きです。基調講演に続いて、「但馬地域におけるシカ生息状況と植生被害」について、兵庫県森林動物研究センターの藤木主任から報告がありました。

1)県内におけるニホンジカの生息状況
1999年の段階で、すでに豊岡市の但東周辺及び養父市朝来市などに多く、香美町や新温泉町にはシカがほとんどいなかったのですが、大雪だった2005年の翌年2006年からどんどん増加し、今では県のなかでもトップクラスで但馬北西部のシカ密度が高くなってきているそうです。

2)食害のよる森林植生衰退の話
森林への被害は、森の下の方に生える植物(下層植生)のスカスカ度でわかります。広葉樹林内で4年毎に県は調査を行っており、一番近い調査は昨年に行っているそうです。下層植生の衰退度(森のスカスカ度)は但馬南部及び香美町南部に集中しているそうです。

但馬北部の自然を考える報告会

よく見てみると・・・香美町は真っ赤!

但馬北部の自然を考える報告会

過去8年間において被害ランクが悪化し、森がスカスカになっているエリアは香美町に集中しており、三川山、蘇武岳、妙見山周辺が一気に悪化。このエリアでは、林の中でキャッチボールができてしまうほど、草が無いところもあるそうです。実に落葉広葉樹林の約4割で被害ランクが悪化し、氷ノ山周辺では悪化の一途だそうです。残された最後の楽園は扇の山周辺くらいですが、だんだんとシカが迫っているとのことでした。

3)シカ駆除対策
まずは、捕獲による個体数の調整が必要で、そもそもシカの数が多すぎることが森林被害の原因になっているとのことでした。では、シカがどのくらいの数になれば森が大丈夫になるのか?下層植生の被害(森の下草のスカスカ度)が50%以上になると土砂崩れなどの土壌侵食被害が出てくるそうです。2009年時点での推計値は県内にシカが14万頭存在し、年間2万頭の捕獲なら減らないけれども、6年間に毎年3万頭以上捕獲を続けると、目標の森の状態になるそうです。シカの個体数は2010年の16万5千頭(推計)をピークに現在は減少に転じ、現在は13万8千頭(推計)になっているそうです。

ちなみに、年間3万頭の駆除をするために、各市町で割り振りがあり、香美町では最低捕獲頭数は2215頭だそうですが、捕獲達成率は半分に達していないそうです。そのため、農業被害も香美町では深刻なのだそうです。捕獲目標に達成すると農業被害や下層植生の衰退も減るそうなのですが・・・。捕獲が足りない地域における捕獲の拡大が急務なんだそうです(たぶん、そこからまた広がっていくからかな?)そして、捕獲対策を継続的に進めていくことも大事なんだそうです。

但馬北部の自然を考える報告会 農業被害の変化を見ると、香美町は真っ赤。ひどいということです。

シカを駆除するだけでなく、植物が再生しないと山が再生しないため、県民みどり税の中から植生保護の活動を行っているそうです。また、畑を守るために設置する集落防護柵の周辺では、防護柵の外側になる山側はシカに食べられてしまっているが、防護柵に守られる集落側は下層植生の保全効果が高いということです。

 

 但馬北部の自然を考える報告会・シカの環境問題<  |  |  |  >

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今井 ひろこ

今井 ひろこ

1968年生まれ。大阪府出身。住友精化(株)研究所に17年勤務。在職中に但馬の環境教育を支援するNPOを設立。自然豊かな暮らしに憧れ、日本海に面する兵庫県最北の町・香美町へ移住。2010年より観光まちづくりに関わり、地域資源を活かしきれていない事業者に出会う。2014年9月にコムサポートオフィスを設立。年30回の講演や110回のコンサルティングを実施。事業者のやる気を引き出し、売上につなげるアドバイスをしている。

 - 環境・教育

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