ジオガイドは有償にと言いつつ養成講座は無料で行政が開催する矛盾
先日のブログでは、「ジオパークは民間でボトムアップすべき」とトップダウンで行政が言う矛盾についてお話ししました。その話をFacebookで伝えたところ、矛盾はまだあるよ、と教えて下さったのが、「ジオガイドは有償だよねと言いつつ養成講座は無料で行政が開催する矛盾」。私はNPO主催では有償で、自治体主催は無償でジオガイド養成講座をそれぞれに行っていました。
自治体主催で養成講座を行うときに無償にしていた理由は「いままで有料で開催した実績が無い」という理由でした。はぁ〜?!と言いたくなりますが、そんなもんなんです。ただし、町外在住の方は、材料代などの実費が発生する講座だけ(救急法やインタープリター養成講座など)有償として頂いていました。一人1万〜3万円かかる講師謝金はこの場合は別に考えるみたいです・・・行政の考え方がわからんままだったです。。。私は猛反対して講師には全員謝金をお渡ししていましたが、私が入るまでは、町内の歴史研究家や自然観察員などの方には、講師謝金は無しでとお願いしていたようです。(あり得んっ!)
一方、NPOではガイド養成講座の受講は有償にしていました。7回の講座で7000円(1回1000円)。その金額算定基準は、兵庫県の補助金との差額です。兵庫県の地域づくりの補助金を受け、ジオガイド養成講座の開催(ガイド以外も参加OK、¥1000徴収していました)とガイドブック発行などを行っていましたが、100%補助金でなかったために、差額を算定してこの金額を頂いていました。また、もう一つ大事なことが。「プロとしてお金を頂く意識をつけて欲しい。そのためにも先行投資をし、ガイドになったときには何度もガイドをして回収してほしい!」ということです。
ジオガイドを無償(=ボランティア)でするのか、有償でするのか、今でも議論になっています。それはガイドだけでは生計が成り立たないほど、ジオガイドが浸透していないので、専業のなり手が無い。だから、ジオガイドに認定される多くは時間に余裕がある年金受給者などになりがちです。そうすると、生活に困窮していないために、自分の学びにつながるからとガイドも無償でやってしまいがちです。
ジオパークに関わる自治体は、ガイドを何人養成した、という実績をあげる必要があります。人数だと効果測定しやすい。そのためには受講者を一人でも多く認定せねばなりません。その結果、一人でも多く=一円でも安く=講習は無料で、ということになります。(それこそ、ガイド養成講座を有償で行って事業を展開させたい、ウチのような環境教育系NPOへの民業圧迫です)
無料でガイド養成講座をすると、参加者の中には適当に受講して資格だけ欲しいという「資格マニア」が残念ながら出てきてしまいます。その方はガイドになる強い意思は毛頭無く、とりあえずガイド登録しておこうという、テキトーガイドを増産することにつながります。一円でも参加費を支払っていると、その分は元を取ろうと、真剣にガイド養成講座に取り組むはずです。
年金をもらっているし、明日からの生活、借金取りがドアを蹴破るという具合に困窮していなければ、ガイド料金をお客さんから頂くなんて申し訳ないと思うシニアガイドの方も少なくないです。その「申し訳ない」との気持ちはお客様にではなく、将来、ジオガイドを自分の糧として考えたい方にこそ向けられる言葉なのです。お客様から一円でも多く、そしてお客様にありがたく頂くガイド料金には、ガイド本人の血と汗と涙と、何度となく歩き確認したガイドコースの下見と、たくさんの資料を集めて自分で咀嚼して理解し、さらにお客様にわかりやすいようにと翻訳する、大変な作業をして得た「仕事」としての対価が含まれています。その過程において失敗も成功も数多く経験し、失敗の時も成功の時も代金を頂戴して、その対価の意味をかみしめながら、プロガイドとなっていくのです。
その大事なメンタルなプロガイドとしての課程をすっぽりと取ってしまう、行政特有の「住民サービスとして行う無償のガイド養成講座」をそろそろ考え直す時期に来ているのではと、プロガイド歴10年の私は思います。
今井 ひろこ
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