日本に”世界ジオパーク”続々誕生~NHKラジオ番組を聞いて(3)
2014/10/22
10月12日に放送されたNHKラジオ第1放送「私も一言!夕方ニュース」の中で、「日本に”世界ジオパーク”続々誕生」という題で日本ジオパーク委員会事務局の渡辺真人さんが出演されて、ジオパークの説明を分りやすくなさっていましたので、その番組の書き起こしの要約を先日のブログに続き、お届けします。(M:解説委員の室山哲也さん、W:渡辺真人さん)
M:今回、日本で阿蘇が世界ジオパークに選ばれたわけですが、どういう理由で選ばれたのですか?
W:一番大きな理由は、阿蘇は巨大な噴火によって阿蘇カルデラができたのですが、これまでの世界ジオパークには巨大噴火の痕跡をテーマとするジオパークが無かったことです。さらに阿蘇はカルデラの中に噴煙を上げる、まだ活発な火山があり、火山の今の活動を見るだけでなく、過去の巨大噴火についても知ることができる、というのが、地学的な意味からみての大きな理由です。
W:人の暮らしとの関わりですが、阿蘇の山自体が雨をためて地下水を周りに供給するような、川の水源になるような場所になっています。そして阿蘇の火砕流(火山灰が中から出てその周りにたまる)が広いすそ野を作りました。その広いすそ野では、人間が野焼きをすることで美しい草原景観が見られます。その草原景観自体は元々森だったところに人間が手を加えたんですが、長年、草原として維持している間に、里山と同じく、新たな草原の生態系が生まれ、それがずっと守られてきています。昔は森だったのですが、牧畜のために草原化してきたのです。
M:火山なので信仰とか文化もいろいろあると聞いていますが?
W:阿蘇山は昔から信仰の対象となっていて、ふもとの阿蘇神社は伝統があり、火山の火口まで行って神事を行うようなことが行われれています。火山を神と見て、その怒りを鎮めるということに起因していると思います。
M:さて日本にはあと6つの世界ジオパークがありますが?
W:室戸ジオパークは地震の度に大地が生まれるということがテーマです。室戸沖には、近い将来に巨大地震が起きるんじゃないかと言われている南海トラフというのがあります。地震が起こるのは、海のプレートが日本列島のほうに沈み込んでいるためなのですが、海のプレートが沈み込むときに、海のプレートの上に溜っていた泥が日本列島側にくっつくのです。そういうプレートの沈み込みは何千万年も前から起こっていて、日本列島には海のプレートの上に乗ってきた泥が、ずーっとくっつき続けているんです。それを付加体というのですが、それら海からくっついてきた泥の地層を見ることができます。
室戸へ行くと、長い地球の歴史のなかで地震が作った地層と大地を見ることができるのです。
弘法大師がこの景色を見て法名を「空海」としたという洞窟、御厨人窟(みくろど)
そして、北海道の洞爺湖有珠山ジオパーク。ここは2000年に噴火が起こりました。この火山は幸いなことに、毎回噴火の前に割とはっきりした前兆現象が観測されることが多いのですが、その前兆現象をとらえて、学者と行政、住民が協力して避難をし、幸いにしてけが人も出なかったのです。
ここはかなり短い期間で噴火を繰り返しているので、次に備えなければいけないと、防災教育が盛んです。その中で、ジオパークになる前からそういう事を行ってきたのですが、ジオパークとして火山マイスターという制度を作りました。火山マイスターは自ら火山について勉強して、観光客や住民にも伝えます。そしていざ火山が活動を始めたら、防災の中心になる役割を期待されている人たちです。
********
渡辺さんは、日本にある世界ジオパークの中でも、特徴的なジオパークについての説明を阿蘇、室戸、洞爺湖有珠山の3か所のジオパークを例にお話をされていました。私も講演会やプライベート旅行などで行ったことのあるジオパークばかりで、その際に案内もして頂いたので、ラジオで渡辺さんのお話を伺っていて、なるほどなるほど!と頷くことが多かったです。私はジオガイドで案内して頂いたお客様の好みなどを伺って、ほかのジオパークをご紹介することがあるのですが、室戸ジオパークの話の中に出てきた「付加体」の説明も、こういう風に一般の方に説明をすればいいんだと勉強になりました。
お話は明日も続きます。お楽しみに。
日本に”世界ジオパーク”続々誕生~NHKラジオ番組を聞いて (1)|(2)|(3)|(4)|(5)
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今井 ひろこ
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