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小学校児童向けジオパーク教材制作記(4)

      2014/11/29

昨日お話しした、私が手がけた児童向け教材第一号の「館内ワークブック」。選択問題ばかりだと良くないのという話でした。今日は、もう一つ、先生方が実はこれもよくないんですよ、と教えて下さったものがあります。

(4)スケッチは明確な目的と工夫が必要

館内ワークブックを作った時には、スケッチでもほかの課題でもできるように、大きなマス目だけを入れて、引率の先生方にアレンジして使ってもらおうと思ったのです。

館内ワークブック2010
館内ワークブック初版。自由記述の欄を作っていました。

我ながら心くばりができているなぁと思いきや・・・

「白紙のスペースはダメです。描けない児童がいるので。」

え??図工の時間に絵を描いて慣れているのでは?小さなスペースなのでちょこっと描くだけなのに??

色鉛筆

「図工の時間ならテーマを与えると何時間もかけて描くことはできるのですが、館内の観察の時間という短時間で描くということができない児童がいるんですよ。例えば「気に入った魚のはく製を描いてください」と伝えたとしたら、児童はまず『気に入った魚』というものを探します。気に入った魚を見つけても、それがすぐに描けないような難しい形だったら時間が足りないと思い、先に簡単に描ける魚を探し、その中から気にいったものを探す、という本来の「気に入った魚」からは外れます。探しているうちに見つけられない、また見つけても魚のどこを書いていけばいいのかわからない、と分からない尽くしになってしまいます。」

大人の目線では、スペースがあれば適当に描くだろうと思いがちです。幼稚園児に紙とクレヨンを渡しておけば何でも描いてるのを想像しちゃいますね。

a0001_013145

この初版を使って実際に使ってもらった時のことを思い出したのですが、描けてない児童も何名かいました・・・

「校外学習や自然学校では『自分だけできない』はなるべく避けてあげたいですね。みんなが楽しくできるものが理想です。」


過去の苦い経験があったので、今回のフィールドノートの作成にあたっては、絵を描かせるとしても明確な目的とその目的を遂行するための仕掛けを考えました。

描いてもらうのは「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」という課題。町内のジオの見どころ、鎧の袖(よろいのそで)、味取(みどり)の俵石(たわらいし)、岡見公園、そして豊岡市の玄武洞です。マグマが冷え固まったときにできる柱状の亀裂です。町内のものは柱状になっていることを確認させ、玄武洞は六角形の柱であることを確認させる、という「学習のねらい」にしました。

柱状節理って何?
「柱状節理って何?」の項目。

全く白紙の状態だと、児童は柱状節理のどこを見てスケッチするのかがわからなくなり、現地に着いて口頭で説明しても、崖の全体像を描く人、一部分の柱だけを書く人、柱状節理のところに咲いた花だけなど、描く対象がバラバラになってしまうそうです。

そこで、今回は薄く写真を入れました。現場で実物を見て、冊子を広げ、薄く印字した写真の上から鉛筆で輪郭をなぞることにより、柱状や六角形になっているということを意識させるのが目的です。

柱状節理岡見公園
「柱状節理」岡見公園の部分。
他の場所は名前の由来についても考えるイラストをつけています。

このように、描く目的とそのための工夫が、児童向け教材を作る上では大切です。

 

illust2712
香美町ジオパークフィールドノート(PDF)
児童編 : 指導者編

小学校児童向けジオパーク教材制作記シリーズ
(1)(2)(3)
(4)(5)(6)
(7)(8)(9)

illust2712

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今井 ひろこ

今井 ひろこ

1968年生まれ。大阪府出身。住友精化(株)研究所に17年勤務。在職中に但馬の環境教育を支援するNPOを設立。自然豊かな暮らしに憧れ、日本海に面する兵庫県最北の町・香美町へ移住。2010年より観光まちづくりに関わり、地域資源を活かしきれていない事業者に出会う。2014年9月にコムサポートオフィスを設立。年30回の講演や110回のコンサルティングを実施。事業者のやる気を引き出し、売上につなげるアドバイスをしている。

 - ジオパークの販促物&教材

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