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「月刊兵庫教育」7月号にジオパークについて寄稿<2/4>

   

昨日のブログから4回に渡ってお伝えを予定している、月刊兵庫教育7月号に寄稿したジオパーク活動についての話の続きです。今日はジオパークの3つの柱、そしてジオパーク教材制作についての思い出話です。

月刊兵庫教育

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温故”地”新 〜ジオパークと地域づくり〜(2)

<2>ジオパークの3つの柱

ジオパーク活動には大きな三本の柱があります。一本目の柱は「自然景観の保護保全」。見どころへの遊歩道に雑草が生い茂り、落木が散乱し、道が崩れているようでは、観光客だけでなく住民すら立ち寄ろうとしません。見どころにどういう云われがあるのかを知れば、守り続けていく意義を住民は感じ、その場所を守り続けていくことができます。そのために必要なのが、二本目の柱「教育機会の創出」です。ジオパークになって、地元のことを学ぶ生涯学習講座が増えましたが、催行するにはバス代、会場費、講師謝金などのお金がかかります。地域振興や観光振興などの経済活動で得た利益を保護保全や教育に充てようというのが、三本目の柱「地域振興」です。

それら三本の柱はあくまでもジオパーク活動を行う上での「手段」であり、ジオパーク活動の真の目的は「持続可能な地域づくり」です。人口が少なくなったとしても、いつまでも住民が生き生きと暮らすことができる「地元」を残すための地域づくりなのです。住民だけでなく、自治体、そして地質学や地理学、農業林業・・・多分野の科学者が専門家として関わり、三位一体となって活動できるジオパークは、今までにない地域づくりの枠組みです。

<3>印象に残るジオパーク教材づくり

数多く行ってきたジオパーク活動の中で、最も印象に残っているのは教材づくりです。地元の小中学校教諭の有志で作るサークル「美方教育文化研究所地域教材開発部」と兵庫県立大学大学院の先山准教授と一緒に制作した、小学生対象の校外学習用ジオパーク教材「山陰海岸ジオパークフィールドノート」です。

じおぱーく教材で学ぶ児童

この教材を制作するきっかけとなったのは、平成23年の夏。町内の小中学校の教師約30名にジオパーク講座を開きました。そのとき熱心に講義を聞いておられたのが、この教材制作のキーマン、余部小学校御崎分校の中尾教諭でした。地学が大好きな教諭で、翌年の夏、サークルでジオパークの教材を作ってみたいと相談を受けました。

小学校6年で地層を習いますが、香美町内では道路から観察しやすい崖のほとんどがコンクリートで固められており、安全に地層を観察できる場所がありません。そのため、授業では他地域の地層の写真を使っているのが実情です。「香美町は世界ジオパークのエリアに入っているのに、理科の「土地の観察」が地元の土地で直接観察できないのが悔しい。児童にはこの大地を実際に自分の目で見て、手で触って感じてほしいのです。」その熱い思いを受け、平成25年に町のジオパーク予算で教材を制作することになりました。

教材に使える場所の選定を行ったあと、初稿の草稿を中尾教諭にお願いし、編集を私が、監修を大学の先生にお願いしました。イラストは児童がすぐに理解できるように何度も描き直し、色覚異常の児童でも分かるように色使いやマークを工夫しました。文章は何度も教諭グループに読んで頂き、わかりやすさと楽しさを重点に、児童用と教師用指導書を制作しました。制作後は町内の学校へ5、6年生分を配布、実際にフィールドワークや自然学校で使ったと聞いています。(当冊子は香美町観光商工課で無償配布、指導書はPFDで香美町HPよりダウンロード可)

「月刊兵庫教育」7月号にジオパークについて寄稿
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住民にジオパークを説明するのって、全く未知の言葉だけに、最初はたくさん戸惑いました。しかし、3つの柱について教えて下さった先山先生のお陰で、ずいぶんと町民に浸透したと思います。この活動は現役の教師までも動いて下さる結果となり、私の卒業研究として、ジオパーク教材作りができました。ほんとうに懐かしく、また、実りある教材となりました。

それにしても、この教材づくりを観光商工課はよく許可したなぁ〜!と思います。先生方のサークルとはいえ、先生方と協働するときは教育委員会を通さなければいけなさそうだったのですが、当時の課長が話を教育長へ通しておいてくださったおかげで、すんなりと教材づくりや冊子発行までこぎつけることができました。教育長もジオパーク活動を支持なさってたことも追い風になりました。他のジオパークで同じように現役の先生方と一緒に作っては?とアイデアをお話したら「そんなの無理」「先生方しらないからなぁ・・・」で終わってしまいました。それはたぶん・・・下から目線のように見えて、実は上から目線で話を持って行ったりしているから?

教材づくりも、人脈づくりも、簡単ではありません。簡単じゃ無いから、できる過程ももだえ苦しみながらですが、楽しくもなってきます。出来てからの反響も大きいし、その教材を使ってくれる児童も「わかりやすい!」先生も「使いやすい!」って使って下さる。今、私は香美町から離れていますので、教材がどう活用されているのかがわかりませんが、活用されていることを祈念して、この兵庫教育の原稿を書きました。

お話は更に明日へと続きます。

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今井 ひろこ

今井 ひろこ

1968年生まれ。大阪府出身。住友精化(株)研究所に17年勤務。在職中に但馬の環境教育を支援するNPOを設立。自然豊かな暮らしに憧れ、日本海に面する兵庫県最北の町・香美町へ移住。2010年より観光まちづくりに関わり、地域資源を活かしきれていない事業者に出会う。2014年9月にコムサポートオフィスを設立。年30回の講演や110回のコンサルティングを実施。事業者のやる気を引き出し、売上につなげるアドバイスをしている。

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