かつて北前船が運んだ「石州瓦」を秋田でも発見!
昨日のブログの最後のほうで、
他のジオパークを見学することは、自分のジオパークとの違いを鮮明にさせてくれます。そして、誰よりもジオパークを楽しむことができます。自分のジオパークに居るよりも、楽しみ方を教えてくれるんです。「お客様への楽しませ方、見せ方がわかりません」とお嘆きの新人ジオガイドさんにこそ、別のジオパークに行くことをオススメしたいです。
と書きました。『違い』といえば、今回行った鳥海山・飛島ジオパーク(申請準備中)は日本海沿いにあり、私のフィールド・兵庫県但馬地方も日本海に面していますから、日本海は同じです。ですが、地魚のハタハタは漁法が異なります。秋田では産卵のために岸に来るハタハタを浅海で獲り、但馬では深い場所にいる若いハタハタを底曳き網で獲ります。もちろん食べ方も全く異なります。(但馬の食べ方は主人のブログをご参照下さい)
実は『違い』を楽しむだけでなく、『同じ』を楽しむこともジオパークでは大事だと思っています。共通項を見つけるのは意外と簡単ですし楽しいです。特に私の場合は自分のガイドネタが広がります。今回も共通項を見つけました。それは瓦です。
瓦の産地は、兵庫県の淡路島、愛知県・三河の三州瓦、そして島根県西部の石州瓦が日本の三大産地です。兵庫県の但馬地方では黒い瓦で軒瓦(外側にデザインが施された瓦)に万十唐草(まんじゅうからくさ)模様の付いた石州瓦が多く使われています。(石州瓦の地元では赤い色の瓦が多いです。)
江戸時代もブランドだった「石州瓦」とは?
石州瓦の歴史は古く、江戸時代には北前船(西回り航路)のバランサー(船のバランスを取るためのおもり)としても重宝し、日本海側の港町へ運んでいました。
他の産地の瓦と石州瓦の違いは、燃焼温度が高いこと。瓦の水分が少なく、寒さに強いことです。水分が多いと氷点下に下がったときに水分が凍り、膨張します。長年それを繰り返すと割れてしまうのです。次に、塩害に強いこと。日本海側は冬の季節風が強く、沿岸地域は潮水がミスト(霧状)になります(家の外に自転車を置いておくと、錆がひどいです)。他の瓦では劣化スピードが速いのですが、石州瓦はそういうことがありません。
石州瓦のメーカーさんに伺ったところ、耐久性が優れているので、日本海側では、他の瓦より30〜40年は長持ちします。それが商品サイクルを長くし、頻繁に交換しないから、売れなくなるというのが悩みです、と仰ってました。今でも高級な瓦としてブランドにもなっています。
お客様が「さすがカニの街」と勘違い?!
私は街歩きガイドをするときには、この石州瓦のマークがカニに似ているので「さすがはカニの町、香住でしょ?!」とお客様にお話します。
するとお客様はいろんな家の軒瓦を見ては「カニ!」と喜びます。それが遠く島根県から昔は北前船で運んでいたことを伝えると「すごいねぇ〜!木造船でたくさん運んだの〜?!」と仰って下さいます。江戸時代からのブランドで、今でもブランド瓦として使われている、その歴史を考えると、伝統の技と商品力の凄さに脱帽です。
お客様の想像力をサポートするのがガイドの本領
その石州瓦が先週行った由利本荘市でも数多く使われていて驚きました。北前船で但馬を超えて、北陸も越えて、遠く東北のここまで瓦を運んでいたんだと思うと、ロマンを感じずにはいられません。北前船の港町だった、北前船が風待ち港として使っていた、というだけでなく、江戸時代に船が運んだ商品や暮らしの文化が、コモディティ化に向かっているはずの今の暮らしにもそのまま引き継がれていることで、より、北前船の歴史や商いの様子をお客様が想像しやすくなるんですよね。ガイドの時には、できるだけ暮らしに近いモノでお客様にお伝えし、お客様の想像力を膨らませるサポートをしています。
もし、他の地域へ行くことがあったら、是非、瓦も見てみてください。そして、私の住む香住に来られたら、軒瓦を見て、カニ模様を探してみてください。
今井 ひろこ
最新記事 by 今井 ひろこ (全て見る)
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(5/n) 選ばれるだけの理由が無ければ売れない - 2019年1月17日
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(4/n) 着地型観光で選ばれる商品とは? - 2019年1月15日
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(3/n) ターゲットを一つに絞る - 2019年1月14日
関連記事
-


-
但馬牛の安産祈願「大日祭り」に行ってきました!<上>
香美町小代は現在の黒毛和牛のルーツとされる但馬牛発祥の地。一家に一頭、農耕牛とし …
-


-
ジオガイドのリスクマネジメント★そのガイド屋、お客様ファーストですか?
京都からおはようございます。京都は相変わらず外国人が多く、夏の観光真っ盛りという …
-


-
「日本のジオパークへ行ってみよう」日本海新聞連載コラム・三笠ジオパークの巻
城崎オンパクシリーズを今日は中断して、今月の日本海新聞コラム連載「日本のジオパー …
-


-
島原半島ジオパークの平成新山ネイチャーセンターへ行ってきた!
一昨日、昨日と、島原半島ジオパークの南東側を巡ってきました。自然公園財団が運営す …
-


-
ジオパークガイド交流会でインバウンド対応を勉強しました!
昨日、山陰海岸ジオパークガイド交流会に行ってきました!今年第一回目で、鳥取市〜京 …
-


-
住民に対しジオパークに興味を持たせる3つの仕掛け(2/2)
住民へジオパークへの興味の持たせ方や住民の巻き込み方とは?という講演後の質問に対 …
-


-
講師やコーディネーターの有償無償議論の根底にあるもの
先日、ブログで「ジオパークでの講師やコーディネーターは有償か無償か?」という話を …
-


-
松葉ガニと香住ガニと黄金ガニの食べ比べ講座を開催しました!(後編)
昨日の前編に続き、食事のお話です。今回のツアーで使われたカニのグレードが凄かった …
-


-
海の京都・丹後半島の間人(たいざ)がにを初めて食べた!(2・終)
昨日のブログの続きです。とってもきれいな間人(たいざ)かに、頂いたものはできるだ …
-


-
「月刊兵庫教育」7月号にジオパークについて寄稿<3/4>
おとつい、昨日と、月刊兵庫教育7月号に寄稿したジオパーク活動についてお話をしてい …







