ジオパーク全国大会のガイド分科会の様子(4)ガイドと専門家がつながっていない
日本ジオパーク霧島大会・ガイド分科会の続きです。180名余が参加する全体会の会場がざわめき、前に出ているパネラーも「え?どういうこと??(@ @)」とざわつき、私は正直、耳を疑ったこと。それは、会場からの発言。
「専門家とのつながりが無いから、困ります!」(?!)
聞けば、ガイドが正確な知識を得るためには、専門家から学ぶことが必要だと書いてしまうと、ジオガイド団体が専門家とのつながりがない、或いは専門家とのつながりが薄い場合、「専門家から学ぶ」という文言は絵に描いた餅になってしまうので、その文言は外して欲しいという内容のご意見でした。
一瞬、何を言っているのか理解に苦しんだんです。私の場合は正反対なので。
私が活動する山陰海岸ジオパークは、ジオパークを専門とする大学院が有り、先生方とは仲良しで、FBでも電話でも、実際に会いに行って分からないところ、ややこしいところを確認して、ガイドへ反映させています。年に一度はフォローアップも、お忙しいにも関わらず、先生方自らして下さり、ありがたいって思っています。
山陰海岸ジオパークの先生方はガイドと仲良し!
昨年秋のガイド養成講座・ゲストの古園さんと福島さんと。
今回のガイドさんの切実なご意見のように、地学や人文科学の現役専門家がジオパークに深く関わっていないジオパークが日本ジオパークの中にはあるようで、私も実は心配しています。専門家に聞かないままだと、間違ったことをお客様に伝える可能性が大きいです。地学の進歩は早く、昔の専門用語なんてもう使わないこともあるようですが、いまだに30年以上前の教科書に載っている、今や古文となってしまった和製英語も平気で使ったり、地層名(○○層群など)を説明も無くそのまま使って、観光客に伝えている例もあります。何より、ガイドする場所の科学的事象を、ガイド自身の言葉に咀嚼できないですし、間違えたことを言っていても誰も指摘できないですね。
それは一つに、更新や審査、エラい先生方が来られるときには、エース級のガイドや推進協議会の職員が対応して良い子振っちゃうから、ガイド団体の実情が見えにくいし、ガイド団体の中でもガイドの人たちに差が開くのですよね。経験の差も出てきますし。
某ジオパークでは、ガイド団体によっては、現役の地学の大学教員に正確な知識を教えて頂き、ガイド活動をしているうちに「この話は難しいから、お客様に話すのは止めよう」「これはわかりにくいから、お客様にウケる様な内容に編集しよう」となり、目に余ったのか、ガイドの内容が間違えていると大学の先生が指摘したら、「お客様にウケているから、いいんですっ!」と逆ギレされるガイドさんも・・・
ジオパークを進めていく上では、基本となるのは地学の視点。そこを住民やガイド団体、ガイドが質問することが出来る大学や研究機関の専門家が居ない、ガイド団体やガイド協議会と繋がっていない時点で、ジオパーク運営ではレッドカード級だと私は思うのです。確かジオパーク認定のときには、専門機関や大学との連携というのが必須になっていたと思うのですが、形骸化した? 私の中では、由々しき問題です!
ジオパークガイドが専門家とコンタクトを取る方法
先の例の場合は、もし私が同じ立場であれば、推進協議会や自治体に「先生をタダで派遣してくれ!私たちに会いに来てもらって〜!」と他者依存、期待ばかりして動かないのではなく、直接、サポートして頂いている博物館や大学の先生などにコンタクトを取ります。私が香住の二十世紀梨と地形風土の関係を調べているときには、JAや県の農業試験場、鳥取大学や、梨の資料館・梨っこ館へ行き、専門家に伺ったり、専門書を読んだりして、ジオのストーリーを整えました。みな、私が自ら動いて、電話、Fax、実際に会いに行ったりもしました。
ジオパークに関わる先生方はそういう住民やガイドの質問に真摯に対応されたい方が多いです。お手紙でもいいでしょうし、電話でもOKだと思います。直接お会いしたら、参考書なども教えて下さいますし、ガイドの知識レベルを見て、アドバイスもして下さることでしょう。
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以上、分科会のリーダーをさせて頂いて、いろんな議論の中で注目した事柄(驚いたことも含めて)についてお話ししました。

今井 ひろこ


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