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キャッシュポイントで気づいた有料ガイドの問題点

   

今回のジオパーク国際大会(APGN)のガイドのお仕事を、自分事or他人事という視点で見た場合に、ガイドの皆さんがどうして『他人事』になってしまうんだろうと考えた時、私は一つの問題点に気づきました。

行政がお金出して当たり前?!

例えば、ガイドルートのコースで草刈りや清掃が必要だったとします。私は事前のルート確認や問題があれば、事前の清掃もガイドや地元の自治区の役割だと思っていました。ガイドが安全にお客様を案内するためには、障害物となるものはできるだけ排除しておくのがガイドの任務だと思っていたからです。

確かに、バスが通るために枝打ちをしなければならないところでは、技術も必要ですし費用がかさみます。今回は町道だったこともあり町役場にお願いしました。しかしその作業に丸2日かかって費用がかさんでしまい(それだけ凄い作業だったということ)、草刈りの費用までは町が負担ができないと言われました。そうしたら、

「その草刈りにかかる費用はどこからか出してもらえるんですか?」

と聞かれました。

(えっ?!それってお金もらってすることではなく、プロのガイドならガイドコースの整備は、自分事として自分たちでするものでは?)

って私は思っていたので、びっくりしました。私は草刈り機を持っていなかったので、草刈りはさみでバスのカーブで溝ギリギリを行く場所だけでもとカットしてきましたが、特段、やらされ感は無かったです。(主人からは「何で当日ガイドしないキミが草刈りに行くんだ!」って怒られました。だって私はこのコースのコーディネーターで自分事だもの。)

ガイドはボランティア?!

逆に、ガイド料は無料かお車代程度。それで誰も文句を言いません。今回、ジオガイドに対する報酬がとても少なかったので、最初の頃、私も事務局にクレームをつけていたのですが、そんなこという私のほうが異端児のように思われていたようです。

多くのガイドがガイド料をいわゆる「商売レベルでの報酬」でもらうことに抵抗があるようです。もちろん、ガイドレベルや経験、知識云々でお金が頂けるレベルか否かというのはあるかもしれません。しかし、そのために知識やガイドスキル、ファーストエイドなどのトレーニング、沢山の準備と拘束時間を提供しているのですから、責任ある行動をとるためにも対価を得るのは当たり前のことなのです。(傷害保険と賠償責任保険だけで当NPOでは年4万円かかっています)

補助金とボランティアの歪(ひずみ)

この感覚の違いは何なのでしょうか。私の感覚が地域住民の慣習とずれているのか。悩んでいるうちに気づいたのが

準備にかかる費用を行政が補助金等で負担し、ガイドの日当はボランティアか交通費程度

ということが恒常的に行われてきたことです。キャッシュポイント(報酬が発生する場)が私の感覚とずれているのです。

お金

私は元々ダイビングの水中ガイド出身です。お客様からガイド料としてしっかりとお金を頂きます。そのために環境を整えたり、事前に下見をして問題があれば解決しておく等は当たり前に思っていたんです。

でも、あらゆるイベントの準備にかかるお金を補助金等でまかない、当日の日当は手弁当で行うのが当たり前といった田舎の従来の仕組みからは、私の言い分が異端だったようです。

補助金に頼るやり方は地域を減退させる

今回私が強く感じたのは、従来の「地方の常識」としていたこのやり方だと人は育たないし、産業は生まれないということ。人口を減らしていく一方じゃないかと思います。人やお金の不足を補助金でまかなう。言い方は失礼ですが、過疎地に行けば行くほどそれを当たり前と思っている人が多いように感じます。

福島先生も「補助金は地域をダメにする」とはっきりおっしゃっています。

よく行政は、「経営者を応援しよう」「お金をあげよう」「売り先を紹介しよう」と、いろんなことを教えてあげようとする。でも僕はそれに全部反対した。そんなことをしたら国が経営破たんする。なぜかというと、お金をもらった人たちは、次もお金をもらおうと考える。お金がなくなるとお金を要求してくるようになる。またお金をあげると、お金をくれないとやらなくなり、わがままになってしまう。

僕はいつも事例で「橋をかけないでください」と言う。「川があって渡れない」という人に橋をかけたら終わりである。国が破たんする。なぜなら橋をかけてもらった人は、また次の川で「こっちにも 橋をかけてくれ!」と言う。「橋がないから渡れないだろう!」と怒り出し、文句を言うようになり、圧力集団になる。そして国が破たんする。人を育てるのではなく、人を駄目にしてしまったからだ。甘えさせてしまった。依存型というのだが、人のやる気も、自分の力で生きる力も失わせてしまったのだ。

(2015年7月8日の福島正伸先生のセミナーから)

必要なのはお金ではなく、「稼ぎ方」を知った人を作り、それを「仕組み化」していくことです。事業を応援するのではなく、その事業に携わる人を応援していきたいですね。今のままでは、ジオガイドも含め、観光ガイドに若い人たちが就かなくなり、「老後の趣味」で行う無報酬のシニアガイドしか残らなくなってしまいます。せっかく集落にIターンやUターン、残って下さってる若い人たちが、集落に愛着を持つことも無くなり、ドンドン離れていくでしょう。

まずはジオパークガイドから今の仕組みを変えていくことをやっていきたい。それが地域の一つの産業となるようにしなくては。今までのやり方では解決しない「卵とニワトリ論」になりますが、考えていきたい問題です。

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今井 ひろこ

今井 ひろこ

1968年生まれ。大阪府出身。住友精化(株)研究所に17年勤務。在職中に但馬の環境教育を支援するNPOを設立。自然豊かな暮らしに憧れ、日本海に面する兵庫県最北の町・香美町へ移住。2010年より観光まちづくりに関わり、地域資源を活かしきれていない事業者に出会う。2014年9月にコムサポートオフィスを設立。年30回の講演や110回のコンサルティングを実施。事業者のやる気を引き出し、売上につなげるアドバイスをしている。

 - ジオパーク, ガイド, ジオパークとは?

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