世界遺産とオーバーユース~東北環境教育フォーラムより~
2014/09/20
東北環境教育フォーラムのパネルディスカッションでは、地元秋田県や青森県のネイチャーガイドに登壇頂き、それぞれの課題にどう考えておられるのかについて、健忘録代わりにブログに書きますね。
参加メンバーは
工藤 哲弥 氏:八峰町白神ガイドの会会員、八峰町文化財協会会長。世界遺産認定をきっかけにしてガイド養成を行ったそうです。
工藤 英美 氏:八峰白神ジオパーク推進協議会 会長 。元中学理科教諭で、元々理科教材としてジオ資源を活用してきたそうです。
松岡 清悦 氏:松岡食品 代表。3年前に糸魚川GPへ見学に行ったそうです。美味しい豆腐を作る御主人。
高田 敏幸 氏:NPO岩木山自然学校校長。ネイチャー&山岳ガイドとして山を中心に活動されています。
という顔ぶれでした。
世界自然遺産やジオパークを活用していく上での課題
・世界遺産はツーリズムでなく保護や教育が中心なのに、それがおざなりになっている。地元の人はどうしても目先の利益に走り、地元の理解が得られないと感じることがある。最近はペット連れで白神山地へ来るお客さんがいて、山が汚されていく。しかし、その人たちが来ないことには観光が成り立たなくなる矛盾があり、オーバーユースを特に感じる。
・ふるさと教育をもっと行い、地域の人に白神の価値を認めてもらえるかが鍵。
・震災でお客様が減り、今もその数が震災前に戻っていない。
・八峰町は素材がたくさんあるので、目的に応じてどうそれらを活かすか、ガイドにとってはとても大切な問題。
・自分たちのガイドは地学の専門的な話を入れていかなくてはならないのか?もっとたくさんの資料を準備しておかなければならない。
どういう風に工夫をしてお客様に伝えているか
・お客様一人一人に対応するおもてなしを第一に考えている。白神を案内するときには、木や植物等の話だけでなく、地域の生き方暮らし方(山とともに暮らすマタギなど)について話をするように意識付けをしている。ブナを植樹することがあるが、なぜそれをするのかという本質を見極めてきちんと伝えることが、白神への本当の理解につながっていく。植樹したブナの中には、どこで育てたかわからない苗木を植樹した結果、今までに白神になかった菌がその木から出て、周辺がダメになった所がある。白神で守るべき種の多様性をきちんと説くことが必要。このようなことを自分の言葉で話せるガイドは、長年培われてきて初めてできるものである。
・体験イベントをさせるときには、子供たちから積極的に意見や答えを言わせるように工夫する。
・八峰白神ガイドの会では手作りのものを自分たちで工夫してお客様に説明するときの道具として用いている。ガイドの質を高めていくためには多角的な視点で話すことが大事。地域の資料を地域の人がどう理解していくか、自然界とどうつながっているのか、そこはむしろ生活教育としての生涯教育の在り方かと。
ジオパークの広がりに期待する部分や展望
・女性の活用を考えたい
・子供たちにガイドさせるなどして、一人でも多くの人に「地域の事を伝える経験」が大事。
・人づくりに力を入れていきたい
・若い人たちが出てきてほしい。自分たちの後継者が必要。
・地域に根差した活動をしていきたい
・エコミュージアム構想もやってきたが地域の人には受け入れられていないので、ジオパークでは手法を考えてやっていくこと
・八峰町はコミュニティの強さと濃い人が多い。外に出てみて、比べるものができた時、「地元の当たり前」が価値になるはず。実は地元の人が一番地域の良さを知らないので、このような交流を行ったり、どんどん外へ出て、外の様子を見てこないといけない。
最終日のファシリテーター・谷口さんがホワイトボードに要点を書いて下さいました。
環境教育とは、気づき、考え、そして行動をしてもらうまでのことを言います。具体的なアクションを起こすことで持続可能な環境を残していくということです。私は世界自然遺産は保護保全で、地域の人や観光客がどうアクションを起こしていくかで、白神山地が将来に渡ってこの環境を維持できるかが決まってくると思いますし、同時に、ジオパークで地域の人が「おらがムラの、唯一無二の価値」に気づき、どうアクションを起こしていくかで、この地域に集落と人間が残るかどうかが決まってくると思います。
ジオパークの活動と世界遺産の活動は切り離して考えるべきでは無く、むしろ、八峰白神ジオパークではネイチャーガイドの一部がジオガイドを兼任しているため、今回のフォーラムや体験活動を通じて、地域の暮らし(ヒト)と白神山地(大地)のつながりというものを、他のジオパークよりも深く愉しむことができたような気がしました。
ジオパークの推進協議会の皆様
中小企業、個人事業主を含む
ジオパークの民間事業者支援は
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