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住民にジオパークを広げたいなら

   

今年に入って、天草ジオパーク、白山手取川ジオパークへ行き、ジオパーク講演会で登壇してきました。そのときに、ジオパーク担当の役場職員に聞かれたことで、最も多いのが「住民にどうやったらジオパークがひろがるのでしょうか?」という質問でした。

住民にどうしてジオパークが広がらないのか?それは、最初にジオパークを「地質公園」と広報してしまった、或いは地元の化石愛好家や地質愛好家が「これからは地質の時代!」といわんばかりに「ジオパーク=化石・岩石」というキャンペーンを張ってしまった、など様々な要因があります。でもジオパークが広がらない原因の多くは、住民の中に入ってジオパークを伝えていないからです。

私がジオパーク推進員になった当初に行ったことは、観光協会や自治会、老人会、商工会に出向き、ジオパーク講座を行ったことです。ジオパークが何かが分からないのに民間で活用のしようがない。それまでにも担当課では出前講座を1,2度なさっていたようですが、資料を見たら言い回しが役場流で、聞く相手のジオパーク理解度を考えずに作っているものでした。

ジオパークは立場により活用方法が違います。例えば小学校であれば、ジオパークはふるさとの誇りを醸成する「ふるさと教育」として活用できます。生涯教育であれば、ジオパークは地域への誇りを醸成すると共に、自分の知識をより深めて豊かにするために活用できます。商業者なら、ジオパークで学んだことが商品開発の糸口になったり、商品ストーリーづくりに役に立つものになるはずです。そして観光客なら、今までのガイド雑誌に載っていない新たな視点、観光ポイントを知ることができるのがジオパークです。老人会に話すことと商工会青年部に話すジオパーク活用法は違って当たり前で、それを異口同音で話そうとすることに無理があるのです。わかっているけど、それをしてしまうのが行政職員の悲しい性なのですが。

対象に合わせて話す

私は老人会を対象に講座を行うときにはふるさと香美町のお話をしっかりとさせて頂いたあと、「どうやって息子や娘、孫を香美町に呼び戻されますか?お墓の守はどうしますか?集落はどう存続させますか?」と投げかけますし、商工会観光部会では、その部会の範囲にあるジオの見どころをわかりやすく説明した上で、「従業員が地域の観光名所に行ったことが無い、知らない、では、観光客は困るのです。ジオサイトだけでなく観光名所、お客様がよく行く場所は従業員皆さんで行って勉強して下さい」と伝えます。

冬が終わり、春になると老人会や観光協会、青壮年会、子供会、学校PTA、商工会など、最も多くの総会が開かれる時期です。総会は殆どの方が参加される「イベント」です。本気でジオパークを住民に広げたいなら、書面でも面と向かってでも良いと思いますので、総会の講演会にはジオパークについて話しますとPRをして下さい。住民サービスですので、当然、聴講料は無料で、プロジェクターやスクリーン、PCは役場や推進協議会からすべて持って行きます、講座のセッティングも行います、と伝えましょう。

京丹後市講演会

そういう総会の時期を過ぎてしまったなら、ミニ集会をたくさん行いましょう。そのときには、この人に来てもらったら広がっていくかもという有力者や元気のある人を1本釣りしていくと、だんだんと住民の中にジオパークが広がっていきます。「ジオパークを教えて欲しいと頭を下げてきたら教えよう」と自分から動かなければ、住民は待っても来ないのですよ。それに何年も気づかず「住民に浸透しない」ってぼやいている方、浸透しなくて当たり前です。

演歌歌手もポップアーティストも、最初はどさ回りからはじめるものです。だからこそ、各団体の総会がチャンスなのです。ジオパークをいつ住民に広げるの? 今でしょっ!今やらなきゃダメよ~ダメダメ!!

 

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今井 ひろこ

今井 ひろこ

1968年生まれ。大阪府出身。住友精化(株)研究所に17年勤務。在職中に但馬の環境教育を支援するNPOを設立。自然豊かな暮らしに憧れ、日本海に面する兵庫県最北の町・香美町へ移住。2010年より観光まちづくりに関わり、地域資源を活かしきれていない事業者に出会う。2014年9月にコムサポートオフィスを設立。年30回の講演や110回のコンサルティングを実施。事業者のやる気を引き出し、売上につなげるアドバイスをしている。

 - ジオパーク, ジオパークとは?, ジオパーク講演会

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