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ジオパークにおける「ソシオ資源」とは?

   

昨日、兵庫県立コウノトリの郷公園の運営懇話会に行ってきました。年2回、環境系NPOの立場で参加させて頂いています。毎年、コウノトリの郷公園や県立大学コウノトリキャンパスの研究内容についてお話を伺う、私にとって興味深い時間となるわけです。今年からは県立大学の大学院(地域資源マネジメント研究科)が出来ましたので、大学院の先生からもたくさん話も聞くことができました。

コウノトリの郷公園運営協議会

地域資源マネジメント研究科ってどんなところかというと、

「地域に内在する自然・社会・文化のつながりを科学的に解明し本質的に理解する理論と素養を身につけ、地域資源の発掘・保全・活用を実行できる人材」を育成することを目的とします。
全国でも貴重な地域資源(コウノトリ・ジオパーク等)が存在する兵庫県但馬地域を主なフィールドとし、2014年4月に開設されました。(大学院HPより抜粋)

今回私が注目したのは「ソシオ資源」という考え方。大学院の中井先生からお話を伺いました。

簡単にいうと、文化財の「価値」って時代や宗教、人々の暮らしの中でずいぶん変わってきていますが、1000~2000年前のものが「時の流れ」の中でしなやかに残ってきたことこそ、すごい価値なわけです。ジオパークで探す「ここに在るもの」ってそれだけでスゴイってことなのです。

「地域資源」を考えるとき、GEO(ジオ)資源、BIO(バイオ)資源、SOCIO(ソシオ)資源という3つの大きなカテゴリーがあります。ジオ資源は大地、バイオ資源は動植物・生態環境とすれば、ソシオ資源とは「人間が作り出した、ありとあらゆるもの」を指すそうです。例えば道具や建築物、集落、文化、宗教、人間社会も!ジオ、バイオ、ソシオは、それぞれが関わり合っています。

地質が多様ということは地形も多様です。地形は気候に影響し、土壌は地質(大地)と生態系(自然)によってできています。それによって、人々の暮らし(文化や社会:ソシオ資源)ができていきます。大地、自然、文化・社会を知り、活かすことが地域の誇りとなり、持続可能な地域づくりを進めて行くこができるのです。

「資源」というのは、何らかの目的に照らし合わせて、有用性を持つものを差しますが、言い換えると「価値」を有するもの、となります。例えば資源ごみを考えた時、捨てる側はゴミ=価値のないものですが、回収してリサイクルすると「価値」になるのです。「価値」というものは、時代の流れや、人によっても違うと考えれば、「価値」こそ多様であっていい。その例がタリバンに破壊されたアフガニスタン・バーミヤンの石仏です。

Bouddhas_de_Bâmiyân_-_Aout_2005

(Wikipediaから転載)

この地域には1世紀ごろ仏教が伝来し、その後石仏が作られました(宗教的「価値」の形成)。11世紀ごろにイスラム教が入り、石仏は異教のものとされ、「価値」はダダ下がりになりました。ところが19世紀に入って、英露の植民地支配下に置かれると、入植した外国人たちによって、石仏は美術作品としての「価値」を新たに見出されます。ところが、タリバン政権になってからは、イスラム原理主義のもと、排除される対象、つまりマイナスの「価値」となり、爆破されたわけです。今度はユネスコが世界遺産(危機遺産)に指定し、再びバーミヤン石仏の「価値」は急上昇したのだそうです。

古墳や古文書、祭祀など、昔々からの古いものが今も現存するということは、様々な価値の変化に耐えてきたということだから、それだけでもすばらしい価値があるということですし、時代の流れにそよぐ柔軟さもあるということです。中井先生は論文の中で、

人工物に関してはこれまで,主として歴史的・文化的・美術的観点から価値判断がおこなわれてきた.そうではなく,ジオ・エコ・ソシオの相互連関という融合的な視点を持ち込むことによって,従来的な歴史的・文化的観点にとらわれない,あらたな視点に立脚したあらたな価値の創出が可能になるのではなかろうか.相互連関というあたらしいコンテクストのなかでみえてくる,事物のあらたな価値.となれば,その保全のためには,コンテクストから隔離するのではなく,コンテクストのなかで活かす工夫が欠かせない.ここにおいて,ジオ資源・エコ資源・ソシオ資源を統合した,総体としての地域資源をマネジメントしてゆく眺望が開けるのである.(中井淳史「価値多様性の創出と保全:ソシオ資源を活かすために」野生復帰(2014)3: 13‒19より抜粋

と仰っています。今までの古き佳きものは文化財として生活や環境から切り離して保存する、という画一的な「価値で」はなく、ジオ・バイオ・ソシオの融合的視点でその地域を見て、今までにない価値のものを見つけよう、活かそうというのがソシオ資源の考え方、ということでした。

ジオパークの中の「無形文化財」というのがこのソシオ資源の一つだと私は思っています。今回のお話で「価値」の多様性にも驚かされましたし、大地と自然とヒトの関わりをもっと深く学ぶことで、新たな地域の価値を見出していくのがジオパークなのだと理解することができました。

 

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今井 ひろこ

今井 ひろこ

1968年生まれ。大阪府出身。住友精化(株)研究所に17年勤務。在職中に但馬の環境教育を支援するNPOを設立。自然豊かな暮らしに憧れ、日本海に面する兵庫県最北の町・香美町へ移住。2010年より観光まちづくりに関わり、地域資源を活かしきれていない事業者に出会う。2014年9月にコムサポートオフィスを設立。年30回の講演や110回のコンサルティングを実施。事業者のやる気を引き出し、売上につなげるアドバイスをしている。

 - ジオパーク, ジオパークとは?

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