「歴史・文化の 観光資源活用セミナー」から、ツウ好みの観光ツアーの作り方について
この2月から3月、各回3時間×6回にわたり、養父市地域雇用創造協議会さまからの依頼で、「歴史・文化の 観光資源活用セミナー」の講師をさせて頂きました。今日はそこで行った講義の中から、一般事業者でも役に立ちそうな、対象者によってアプローチが変わることを学ぶ「ペルソナワーク」を紹介します。ペルソナは阪急ホールディングスのブランド名にもなっていますが、マーケティングでは「製品やサービスの理想の顧客の人物像」を指します。
さて、この講座では、求職者を対象として、歴史・文化に関連した観光資源を活用して、ガイドコースなどを立てることができるようにして、宿屋や旅行会社に就職をしたときにそれが活かせれば就職に有利になる、という目標があって、ジオパークのツアーづくりに実績がある私にご依頼があったのです。
6回の講座の中では「地方における観光のあり方」について、特に着地型観光の基礎についてお伝えしました。養父市は10年前に近隣市町が合併してできたため、一市とするとエリアがとても大きく、協議会からの意向で「旧大屋町」に決まりました。この大屋町は但馬(兵庫県北部)でもIターンの多いところです。宿泊施設は皆無に近いですが、隣の旧関宮町にはハチ高原というスキーやグリーンシーズンになるとお客様でごった返す(らしい)民宿街もあるようですので、そこを利用して市内を巡るコースが設定できます。
昔むかしは、観光というと大型観光バスでA地点からB地点へ移動するオリエンテーリングのようなことをしていました。それも施設に行って見学して、の繰り返し。ただ施設を巡るだけの観光はもう古いっ!のです。今は商品のPRでもエピソードやストーリーを伝えて訴求する時代になっています。そういうストーリー性の無い観光ルート開発は、地域への興味が薄まるだけでなく、すぐに飽きられてしまいます。ストーリー性と希少性が高いツアーの場合、費用がかさんでもそのツアー内容に共感したお客様は参加します。
例えば、上記画像のある近畿日本ツーリストさんのクラブツーリズムでは、通常のバスツアーの他にテーマ性のあるツアー商品を販売しており、そちらは一般的なバスツアーよりも高いのですが、この旅でしか食べられないもの、特別なガイドやコーディネーターなど、その価格の価値と理由があれば、高くても参加すると担当者から教えて頂きました。
ツウの方に大人気の「歴史街道あるき旅」(近畿日本ツーリスト)
テーマ性を持たせたツアーコースを作るために考えなければならないのは、参加する方の年齢や性別、居住地とその方の収入等の暮らしぶり、そして趣味です。万人にウケるツアーコースというのは作ることができません。昔ならできたのですが、価値の多様化が広がって情報量が過剰な時代には不可能と言われています。そのため、実際の旅行者がどういうところに行きたいだろうかと調査すればいいのですが、調査には時間と手間とお金がかかります。そこで、当地に来られるお客様を想像して、その方の趣味に合わせたコースや商品をつくってみるのです。これが「ペルソナワーク」です。(→勝手に名付けました)実際に、主人の宿ではこのように具体的なお客様像を想像して宿泊プランを作っています。
用意するものは葉書大の用紙だけです。
*旅行する方の年齢とグループ構成
*趣味
の2種類のカードを作ります。
そうして、旅行者は1つだけ、趣味は5つくらい、ランダムに組み合わせます。そうしてその設定に合ったツアーを考えていきます。そのことで、対象者が違うと視点が変わることに気づいて欲しいと思ってこのプログラムを作ったところ、大正解でした。趣味の中のどれか2−3コを満たす見どころや場所を選び、移動手段と、どこに居住か、中産階級か、富裕層かなどを予め決めてからツアーを作ってみると、それらのヒントが無い時に比べて、選びやすくなっているのです。そして、観光客の構成が変わるとツアーコースが全く変わっていました。今回は参加者個人で考えたり、グループで考えたり、といろんなパターンでさせて頂きました。
今までに無い旅行商品を作りたいという方、目新しいジオツアーを作りたいという方などのツアー造成の練習にオススメです。また、この作業は旅行商品だけで無く、一般小売りや飲食店、もちろん宿泊業などでも使うことが出来る手法です。万人受けはしないけれど、ツウの方がみれば、また、ニーズが合うとその方に高く売れていく商品になります。
どういう風に設定を考えたらいいのか分からない方はぜひお問い合わせ下さい。

今井 ひろこ


最新記事 by 今井 ひろこ (全て見る)
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(5/n) 選ばれるだけの理由が無ければ売れない - 2019年1月17日
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(4/n) 着地型観光で選ばれる商品とは? - 2019年1月15日
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(3/n) ターゲットを一つに絞る - 2019年1月14日
関連記事
-
-
豊岡に居ながら秋田のジオパークセミナーでオンライン講演!
平地でも雪が降る、積もると天気予報で脅されたものの、全く問題が無かった昨日。豊岡 …
-
-
ハッシュタグって何?〜ソーシャルメディアの質問から
今日はソーシャルメディアで活用されるハッシュタグ(#)についてお話しします。以前 …
-
-
すばらしいホームページを作ってもクレームを増やすこともある
今年に入って、ホームページの制作アドバイスのお仕事がとても多いです。今日は事業者 …
-
-
宿泊プランを整理しただけで、お客様の宿の売上が1.7倍にアップ♪めっちゃ嬉しい!
おはようございます。一昨日は福井県に行きましたが、昨日は旅館のスポットコンサルで …
-
-
小規模事業者のみなさま、商工会をもっと活用しましょう!
中小企業庁の中小企業&個人事業主の商売をサポートする「未来サポート事業」(通称: …
-
-
4度もあった若桜鉄道の危機。それをどう乗り越えた?! 〜若桜鉄道(株)山田社長の講演から
1/23(月)の山陰海岸ジオパークビジネスフォーラムでは、地域振興の事例報告とし …
-
-
「個」を出すのに「恥ずかしい」という気持ちが商売の妨げになっています
11月から本格的に開始した販促支援。11,12月に支援させていただいたお客様から …
-
-
地方の販促=アナログ×デジタル その極意とは? 〜コムサポ販促塾健忘録その1
ブログがずいぶん開いてしまいました。先週から何かとイベントや主催セミナー仕事が重 …
-
-
「OSを更新しない限り、最新アプリを入れても起動しない」ビジネスにもジオパークにも言えること。
先月、大阪でマーケティングコンサルタントの坪井秀樹(ツヴォイ)先生のセミナーを聴 …
-
-
【豊岡・香住の宿限定】交通アクセス欄、日高神鍋高原ICに変更してくださいね!
今月25日午後6時から、北近畿豊岡自動車道は北に延伸し、いよいよ豊岡市に初の自動 …