ジオパークのビジネス活用例・シーカヤック事業
ジオパークをビジネスに活用する場合、最初に注意しておかなければいけないことは、即効性が無い、ということです。
ジオパークは一度来た観光客に対して、2度目3度目に来訪しても楽しい度にするためのツールであり、「ジオパークが目的」では観光客は来ません。観光客の多くは勉強をするためではなく、リラックスして楽しむために来られるからです。その点、「純粋に見てみたい!」と思う世界遺産とは大きく異なります。世界遺産は一度行くと、リピーターにはならず、別の世界遺産の場所へと行ってしまいます。日本の世界遺産の多くが文化遺産で、建物などが認定されているものが多く、自然のように季節ごとの風景が変わるものではないからです。
まとめると、既に来たことがある観光客に対して、地域の風土を生かした新たなコンテンツや特産品を示し活用することが、観光客をターゲットとしたジオパークビジネスだと定義づけることができます。
代表的な例は、山陰海岸ジオパーク・豊岡市の「たけのジオカヌー」です。
元々は豊岡市総合計画・平成24年~26年にある、『3 持続可能な「力」を高めるまち 3-1 地域経済を元気にするまちづくり』の中の【山陰海岸ジオパーク推進事業(竹野:過疎地域戦略プロジェクト)】で、平成24年度からの3か年予算総額6070万円の事業の一部として行われています。自然体験プログラムを行う「たけのスタイル推進協議会」(事務局は(株)北前館<豊岡市の第三セクター>)が主体となって活動を行っており、複数の宿泊施設や体験施設が豊岡市とタッグを組んでカヌー事業を展開し、官と民とが手を取り合って上手く運営なさっています。メディア宣伝についても豊岡市商工会がバックアップし、ガイドブック、テレビ、新聞、雑誌など、あらゆる方面に出して効果を上げています。
ここに参加している民宿よどやさんはこのジオカヌーと海の家メリの展開をきっかけに業績を伸ばし、各メディアからの取材も多く、豊岡市内では人気の民宿になっています。
この竹野ジオカヌーは美しい海岸線をガイドと一緒にカヌー体験しながら見てもらうアクティビティ。今まで景勝地として活用してこなかった場所、特にカヌーでしか入れないような洞門などに行き、そこでスノーケリングなども行うアクティビティに育てているのが特徴です。
山陰海岸ジオパークのエリア内では元々、先駆的な事業として鳥取県岩美町の渚交流館でのシーカヤック事業が行われており、竹野ジオカヌーがスタートしてから、香美町でも香住ジオカヤッククラブができるなど、シーカヤック事業が飛躍的に伸びています。
カヌーでの問題点は、夏に南風が強烈に吹くと沖へ流されたり、意図しない海流にのってしまい、出発地点に帰れなかったりすること。全国のシーカヤック業者の中には、出発地点に還れず、海上保安庁の船が出動するなどの安全面での問題も聞きますし、漁場や遊覧船のコースとカヌーのコースが重なっている場合は、浅海漁師とのトラブルや遊覧船とのトラブルも聞きます。カヤックの需要が高まると、運用面、安全面でのケアが大事になってくると思います。ダイビングと同様、カヌーの指導者は民間資格ですから、どこまで指導能力が担保されているのかも気になるところです。「保険に入ってるから、安全は担保されている」と実際に山陰海岸ジオパーク内で活動するカヌー運営者から聞いたことがあります(竹野ではありません)。保険は最低条件で、どのような指導と安全管理が行われているかが、事故などで訴訟になった際には非常に問題となってきます。新しい事業なだけに、今後の運用面・安全面、そしてリピーターが継続してくるのかどうかの事業継続に注目です。
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