ふるさと環境交流会in但馬に登壇して
先日、兵庫県が主催した「ふるさと環境交流会」但馬の巻で登壇しました。このフォーラムは第4次兵庫県環境基本計画(H26-35年度)の策定を機に、若者世代のふるさと意識の醸成や地域資源を生かした自発的な実践活動への参画の契機とする、とのことで開催されました。コーディネーターには兵庫県立大学大学院の江崎先生(コウノトリなどがご専門)、そしてパネリストには、ここ但馬では比較的若い世代に入る私のほか、NPO法人コウノトリ市民研究所代表の上田尚志先生、プロの猟師である豊岡市嘱託職員の岡居宏顕さん、大屋で美味しいほうれん草などの高原野菜を栽培し猟師もされている、おおや高原有機野菜部会部会長の金谷智之さんという、今までにない組み合わせでした。
環境問題というと、ゴミ問題や教育活動に関することで呼ばれることが多かった私にとって、特に山の保全や猟師の話がとても興味深く、従来の環境教育フォーラムにはない、斬新な内容でした。環境教育よりもっと切実な「生活教育」が必要だと再認識した今回のフォーラムでした。
今日登壇したフォーラムで最も驚いたことは、鹿やイノシシなどの害獣被害が非常に広範囲に進んでいることです。兵庫県内には多い年でシカが15万頭生息しており、今も12万頭が生息しているそうです。年間駆除数は3万頭以上。それでも鹿やイノシシは過剰です。かじょうだから里へ下りてきて、悪さをします。「猟師」こそが絶滅危惧種で、被害のひどい山には哺乳類が食べない毒草しか残っておらず、山自体の保水能力が減り、山崩れなどの危険にさらされているということでした。
今も居られる猟師さんは、平均年齢が大変高く、山を駆け回る猟師の仕事ができないと辞める方が多くて絶滅危惧種なのだという話を金谷さんがされていました。ハンティング能力はすぐにつくものでなく修行が必要で、一人前になるまでに相当の経験数と年数が必要です。鹿やイノシシにしょっちゅう出会う農家の被害は深刻で、電気柵で広大な畑を囲ってでないと農作物が守れないとのことでした。美味しいときが分かっていて、収穫寸前の芋や葉物を食べられるとのことです。「向こうも命がけだけど、こっちも命がけ」と。
猟師の岡居さんは、里にたくさんの美味しい食べ物があることを何代にも渡って知ってしまったシカやイノシシたちが、里へ下りてこないようにするには、里よりも山のほうが彼らにとって環境がいいようにしなければならず、そうするには、狩猟を復活させ、鹿やイノシシの頭数を減らして、山を豊かに再生させ、鹿やイノシシが里へ下りてこないようにしなければならないとおっしゃってました。この取組が豊岡市で始まり、岡居さんは専属猟師として豊岡市に採用されたそうです。10年先、20年先を見据え先手を打つ豊岡市の政策に、ただただ脱帽です。産経新聞の記事を参照ください。
実は但馬北部には鹿は生息していなかったそうです。それが道路網の整備、温暖化による降雪量の減少などで里へ下りてきやすくなったり、北部での生活もできるようになり、一気に生息域を北上させました。今が12万頭前後、その数を毎年3万5千頭ずつ捕獲して減らし、増える前の水準にしたいのだそうです。ただ鹿を減らせばいいということでなく、人間界に降りてこないような森の保全も必要で、ここ40年、ほとんど手が加えられなくなった死に体の森や山の再生を図らなければ、抜本的な森林保全につながらないのです。
フォーラムに参加されていた方が、この5年での獣害による山の荒廃と植物の絶滅についてお書きになったブログを紹介してくださいましたので、参考資料と合わせてリンクを貼っておきます。
(参考資料)
◇第4次兵庫県環境基本計画(H26-35年度)
◇兵庫県森林動物センター 兵庫ワイルドライフモノグラフ
◇猟師の減少による影響について 「クマ被害、全国で100人超」朝日新聞
◇シカの食害深刻、6500頭駆除へ 兵庫・豊岡市が捕獲作戦を拡大 「専任班」新設
◇「但馬のシカを考える」但馬情報特急HP
◇「川も大変 カワラハハコ」但馬情報特急HP

今井 ひろこ


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