城崎温泉・温泉寺と古式入湯作法(下)~城崎オンパクでジオってみよう(2)
2014/05/28
今回の目的は、温泉寺で古くから大切に伝えられている「古式入湯作法」。古くから城崎温泉に来たら、まずは温泉寺へお参りし入浴法を教えて頂いた上で、お寺から湯杓を授かり、それを使ってお湯を浴び、帰るときには温泉寺へお礼参りとともに湯杓を奉納して帰るという作法があったそうです。古来、温泉に入ることは「湯治」、つまり温泉療法でした。薬師如来様の不思議な力で治っているものと考えられ、温泉寺のふもとにはそれを意味するように薬師堂が立てられています。
温泉寺 薬師堂
湯杓は神仏の手の代わりであり、お湯は神仏から頂いたありがたき恵み。湯杓は粗末に扱わず、置き方使い方が決まっています。このことから、城崎温泉は「薬効あらたかな不思議なお湯」つまり、「宗教としての温泉」「薬としての温泉」という意味合いが強く、地域の方々はリュウマチなどを治す神仏の薬として湯治をしていたということになります。
手拭いに記された古式入湯作法を見て頂くと、頭から湯杓で湯をかけるしぐさがあります。そもそも、どうして湯杓を用いたのか。なぜ桶でなかったのでしょうか?
温泉寺で販売されている、古式入浴作法の手拭い。
宗教的には、桶をザブンと浴槽につけることは、神仏の湯に素手をつけるということになり、恐れ多い&汚らわしいということだったようです。
ところが科学的には湯杓を使うことが理にかなっていたそうです。地下深い断層から湧き出る城崎温泉の源泉は80℃前後、湯質は食塩泉です。食塩泉は通常のお風呂より熱く感じ、のぼせやすいそうです。温泉ガイドHPによると、『入浴後も皮膚に塩分が付着して汗の蒸発を防ぎ、身体が湯冷めしにくい』ためです。そのため、頭から湯杓で少しずつ湯を被ることで、脳の血管を広げ、のぼせにくくするのだそうです。食塩泉の効能は神経痛やリュウマチ、冷え性などに効果があります。また、強い殺菌効果もあり、火傷や切り傷、皮膚病、婦人病にお悩みの方にも打って付けの温泉だそうです。(先出の「温泉ガイドHP・食塩泉」より)
明治時代の城崎温泉の写真が街中で見られますが、昔は深い浴槽に立って入り(熱すぎて長湯できない)、湯船から出た後、周りに敷かれたすのこの上で休憩し、冷えてきたら、肩にかけた手拭いに湯杓で湯をかけて、ミストサウナのように使ったということです。今のように湯温を自由に調整できる時代ではなかったので、人間がお湯に合わせて温泉を利用していたということになります。残念ながら昭和40年代の高度経済成長時の旅行ブームとともに、最初に温泉寺に参ってお湯を崇める文化は消え去ったそうで、いつしか地元の方は湯杓を使われなくなったそうです。昔の城崎温泉の外湯の風景の中に、湯杓が映っています。
木屋町小路にある、一の湯の明治時代の写真。湯杓が並ぶ
今回の体験プログラムでは、温泉寺の歴史や縁起を伺い、本堂の見学をさせて頂いたあと、湯杓の持ち方と使い方、唱える言葉を練習。下山して、道智上人が発見したといわれる「まんだら湯」へ向かい、温泉寺からお借りした湯杓を使って、古式入浴作法を実際にやってみました。唱える言葉や作法はなかなか覚えられないので、その作法を書いた手拭いを頂き、それを見ながら実際に古式入湯法にチャレンジ。かけ湯せず、いきなり頭から湯をかぶることは今までにしたことがありませんでしたが、確かにその後湯船に浸かってものぼせませんでした。温泉の使い手になった気分で少しうれしかったです。たぶん、お風呂に入っておられた方々は、杓を持ち、もごもご唱えながら頭から湯をかぶる私をきっと不思議ちゃんのように見ていたことでしょう。
道智上人が発見したとされる「まんだら湯」
「城崎温泉を古(いにしえ)の時代から続く大地の恵み、神仏からの授かりものという感謝の気持ちを込めて、古式入湯作法として守り伝えていくことが自分の使命」と副住職さんはおっしゃっておられました。これぞまさしくジオパークの理念っ! 城崎にもしっかりとジオってる方がおられたんですね。私も1人のジオガイドとして、大切な大地の恵みを伝えていきたいと思います。
城崎温泉 温泉寺副住職と主人と私
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今井 ひろこ
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