ジオガイドは読んで欲しい「2038年 南海トラフの巨大地震」(尾池和夫 著)
先日の土佐清水ジオパーク構想での講演会を前に、是非読んでおきたいと思ったのが「2038年 南海トラフの巨大地震」。日本ジオパーク委員会の尾池和夫先生(京都造形芸術大学学長、元 京都大学第24代総長)の最新刊です。和歌山沖から四国沖にかけて伸びるプレート境界「南海トラフ」の巨大地震が2038年頃に起こると予想されているため、それまでにどのような減災ができるか、大地震直前に予測が出来るのかなどが書かれています。
尾池先生は地震の専門家で、次の南海トラフの大地震は必ず起き、それは明日とかではなく、2038年頃に起きると予測されています。必ず起こるということと、いつ頃起こるかがハッキリしている、世の中でもこの場所でしかできない予測です。
先生は常日頃「日本は変動帯の大地」と仰っています。地震は当たり前に起こり、火山は当たり前のように活動するのです。日本がユーラシア大陸から約2000万年前頃から離れてきて今の位置にいるのですが、その活動は実は今も続いているのですね。先生が本の中で示した図が、ビックリなのですが、巨大地震を起こす場所って、大陸の端の方にある「列島」なんですよ。偶然じゃ無く必然です。また、インドネシアで過去何度も大地震と津波を繰り返してきましたが、インドネシアと日本の地図を同じ縮尺で並べたら、列島の弓形などがウリ二つなのです。
ところで、なぜ2038年頃って予想がついているかというと、過去5000年にどんな地震や津波が起こったかが、地層を見ると一目瞭然なんだそうです。国の地震調査研究推進本部のHPの図を見ると、いつ起こったかがわかります。
この付近では、100年から200年の間に一度、一年に数センチは沈み込んでいるプレートのひずみを元に戻すチカラによって地震が起きて、津波が発生するんですが、ちょうどそのタイミングが2038年頃とされているんです。それより早く起きれば小さくなり、それよりも後に来たら、より大きな地震に繋がるのです。
とんでもなく規模の大きな地震が起こり、そのような巨大地震はプレート境界のある海底で起こるから、直後に大津波が来るという判断が、地震のことをきちんと理解しているヒトには完璧にできるということが重要な意味を持っているのである。(中略)科学の知識があって、自然現象から得られる情報を理解する能力を持った人が増えてほしいと私は思っている。そのような人たちが社会のあらゆる要所にいて開設することが、災害の軽減につながっていくと思う。
(第一部 南海トラフの巨大地震 その仕組みと予測 / 南海トラフ概観 より抜粋)
これこそがジオガイドの役割であり、それを観光客だけでなく、地域住民にも知らせていくべき大事なことなんだと思いました。
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先月のジオパーク全国大会のガイド分科会で討論の一つになった「『地球を伝える』とは地球活動なのか、地球環境なのか、地球そのものなのか?」という話。「そんな大きなスケールの話しはできません」って断言するガイドさんまで居て、議論のまとめ方が難しかったと聞いていますが、この本の第一部の中に「地球の歴史」という段があり、これがとてもわかりやすい表現になっています。地学を学んでいない人でもわかる内容になっています。尾池先生は京都造形芸術大学の学長をされていて、そこの学生さん達にも授業をなさっていて、地球の歴史について話しをするそうです。その内容も地球を四五歳の女性に見立てて語ることを試みているそうです。
地球の歴史の中での一億年を、ある一人の女性の年齢一歳分に置き換えて、地球を四五歳の誕生日を半年ほど過ぎた女性の人生に置き換え、アルバムで綴りながら説明するという試みである。その女性の名は、テラさんという。(中略)テラさんが生まれた直後に、妹の月、ルナさんが生まれた。(略)
(第一部 南海トラフの巨大地震 その仕組みと予測 / 四五歳のテラさんのアルバム より抜粋)
人それぞれにたとえ方の違いはあるでしょうけれども、まずはきっちりと地球の歴史について勉強した上で、尾池先生のような物語風にお伝えすることで、地球についても語ることの出来るジオガイドに育っていくのでは無いかと思うのです。最初からそういう大きい話しは無理ときめつけるのではなく、まずは知ることが大事です。
今回、講演会を尾池先生と一緒にさせて頂ける機会を得ましたので、サインもして頂きました。尾池先生、本当にありがとうございました!
学長ナマズも書いて頂きました♪
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今井 ひろこ
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