先月まで「超」消極的だったジオパーク国際会議のガイド依頼、その理由とは。
2015/06/22
久しぶりにジオパークの話です。先日、観光ガイドコースの下見に行ってきました。9月15日から5日間に渡って、京都府京丹後市〜鳥取市の山陰海岸ジオパークエリア全域を使って開催される、アジア太平洋ジオパークネットワーク国際会議(以下、APGNと略)。アジア太平洋地域のジオパーク関係者や研究者が一堂に会します。その間の18日(金)にガイドツアー(香住コースは100名−200名)が予定されているのです。
下見では、山陰海岸ジオパーク推進協議会スタッフと、町のジオパーク担当職員、そして、地質&化石専門家の先生方、NPO代表である私の主人、ガイド分会長の総勢9人で、コース設定や話す内容などの打ち合わせを入念に行いました。
この国際会議でのツアーガイド、正直、乗り気では無かったんです。国際会議の開催も、どこかお上の遠いところで決まっていて、ガイドコース造成時から「お上や先生方からやらされている感」が強かったから。APGNで私がガイドする香住コースは、当初は予定されていなかったのです(私がいつもガイドする定番のコースなのですが)。なぜならば、私のNPOでは山間部の観光ガイドを昨年から養成しており、そのガイド事業の集大成としてAPGNのガイドツアーを位置づけ、山間部の方々と1年以上前から準備を進めていたからです。突然、協議会から「先生方から海側のコースを増やして欲しいとリクエストがあったので、イマイさん、そちらも担当して下さい」と、うちのような小さなガイドクラブに海岸部と山間部と2コースも依頼され・・・積極的に関わりたくなかったため、SNSやブログでも宣伝することは控えてきました。
今回のガイドツアーで一番キツい依頼と思ったのが「バスに乗車してバスガイドをしてほしい」との依頼です。
国際会議は初日が兵庫県豊岡市、最終日が鳥取県鳥取市。途中で移動が入るため、ガイドツアーを挟み、移動するのだそう。府県をまたぐ広域ジオパークにありがちな「行政の壁と地域バランス」のようです。(一つのジオパークであればそんなバランス云々って言わないと思うのですが。。。どやさ?)
バスは兵庫県豊岡市を出発して、私のフィールド・香美町香住のジオの見どころを回り、鳥取県鳥取市に到着するコースです。実のところ、山陰海岸ジオパークのガイド認定者の中で全ジオサイトの話ができるのは、私が知っている範囲では恐らく1人しか居られません。この私でも、兵庫県内+京丹後海沿いエリア、全体の1/3の範囲が精一杯です。コース全体が案内できるジオガイドの養成を推進協議会がしてこなかったにも関わらず、バス会社にバスガイドを頼むと金額が高く付くのか、豊岡ー鳥取間のバスガイドをガイド団体から2人(外国人バスと日本人バス)出して下さいと言ってきたこと自体、とても無謀に思えました。
私のNPOで育成したガイドはバスガイドではなく、2−3人のお客様をご案内するガイドです。お客様が何を知りたいか、どういう目的で香住にこられたのかを伺ってから、お客様に合わせたオンデマンドガイドを行うためです。団体旅行を相手にするようなガイドは年に1度あるかないか。ガイドならどんな形態でもできるワケではありません。
海岸の崖っぷちを歩かせる安全上、1台バス50人のお客様を一人のジオガイドが案内するのは無理だと私は考えています(事故が起きて裁判になったら勝てません)。安全を配慮すると、アシスタントやガイドの助っ人が必要になりますが、当日参加できるガイドが1人しか確保できませんでした。私のNPOのジオガイドの皆さん(特に海岸部)は、ボランティアガイド団体によくありがちな定年過ぎて時間に余裕があるヒトが揃ったガイドチームではなく、他に本職の仕事を持つガイドばかりで、どうしても仕事優先になります。休業補償できるほどのガイド謝金が今回のAPGNでは出ない中、弱小NPOが頭を下げて仕事を休んで下さいとお願いできるワケがありません。
そういう理由から、バスガイドがどうしても必要であれば、テープでガイド内容を音読して録音しておくので、それを移動途中に流せばいい、それでなかったら、ガイドコースを詳しく案内した解説ペーパーを作って参加者へ配ればいいやん、とさえ思うように。弱小NPO団体で背負うには荷が重すぎて、今月になってAPGNのガイド事業からは撤退をさせて頂こうと、追い詰められていたわけです・・・
ところが、今月のとある会議をきっかけに「何とかガイドがやっていけるかも?」という期待が生まれ、ツアーまであと3ヶ月という今になって、前向きに取り組もうと決意しました。前向きになった理由、そして私がプロデュースする香住コースの概要、見どころはこちら(リンク先)でお話します。
今井 ひろこ
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