ジオガイドの質の維持と向上に必要なこととは?(1/2)〜ジオパーク全国大会2017分科会⑤「ジオガイドの人材育成と団体運用について」報告
ジオパーク全国大会の健忘録も書いておかねば・・・ということで、今回、コーディネーターと当日のファシリテーター(司会・黒子)をさせて頂いた分科会の報告をブログでさせて頂きます。
兵庫県北部・豊岡市で宿専門の集客アドバイザー時々観光ガイドをしている今井ひろこです。当ブログへお越しいただき、ありがとうございます。
事前に推進協議会へアンケートをお願いし、課題を抽出
ジオガイドに関わる分科会は2つあり、一つはスキルアップ(定員150名)。もう一つが今回の分科会でジオガイドのマネジメント(運営)(定員50名)です。
昨年まではジオガイドのマーケティング(経営)がありましたが、今年からツーリズム分科会に合併されましたので、2つだけになっています。
ジオガイドの運営といっても範囲が広いため、今回はガイド団体を束ねる推進協議会でどんな問題がクローズアップされているのかを事前にアンケート調査。その中から、今回の分科会担当の栗駒山麓ジオパークと、分科会運営スタッフのNPO伊豆半島ジオガイド協会の田畑朝惠さんと一緒に決めていきました。
(今回の分科会の登壇者とスタッフで前日打ち合わせ)
アンケートの集計では、大きく3つの問題が浮き彫りに。
*ガイドの高齢化
*若年層のジオガイド養成と人材確保
*ジオガイドの質の維持と向上はどうしたらいいのか?
上記オ2つのガイドの年齢問題については、ガイドも交え、ステークホルダー全体で考えるべき問題であるという結論に達し、今回、協議会職員だけで行うセッションとして「ガイドの質の維持向上に必要なものとは?」という課題をピックアップすることになりました。
分科会前半90分では、ジオガイドの質がハンパない洞爺湖有珠山ジオパークと、ガイドを束ねる団体と推進協議会と良い協働関係が出来ている伊豆半島ジオパークの事例について、それぞれ報告をして頂きました。
(左から洞爺湖有珠山GP三松さん、伊豆半島GP高橋さん、田畑さん)
事例発表1)洞爺湖有珠山ジオパークの事例
洞爺湖有珠山ジオパークにおけるジオガイドの活動紹介と養成カリキュラムについて、NPO有珠山周辺地域ジオパーク友の会(以下、ジオ友と略)事務局長で火山マイスター、本職は役場職員(ジオパーク担当)で、昭和新山を一家で管理する三松靖志氏から紹介して頂きました。
洞爺湖有珠山ジオパークでは、ジオ友と洞爺湖有珠火山マイスターネットワークの2つのガイド団体があります。ジオ友も火山マイスターもガイドをしますが、火山マイスターのほうが重度のジオ中毒者になり、試験も大変厳しいそうです。
そのため、自主勉強会が多数開催されたり、地元新聞にコラムを書いたり、試験前ともなると有珠山の周りで辻説法までして準備をするとのこと。ガイドを量産するのではなく、レベルを上げて、質の担保と向上を図っています。
火山マイスターが当地ではブランド化し、洞爺湖有珠山エリアに住んでいることが条件と知って転勤し受験する人も出始めているそうです。
団体の維持費ですが、補助金には頼らず自主運営です。そのため、推進協議会から依頼されたガイドでも値引き無しでガイド料を支払って頂くとのこと。(ガイド料もボランティア金額ではありません)
ガイド団体と推進協議会との協働については、推進協議会やご自身のような行政マンが潤滑油になっているのでは、ということも仰っていました。スーパー公務員の役割、大きいです!
事例発表2)伊豆半島ジオパークの事例
伊豆半島ジオパークは推進協議会の高橋誠さんと、伊豆半島のジオガイドを束ねる「伊豆半島ジオガイド協会」の田畑朝惠さんから紹介して頂きました。
元々自然豊かですし、首都圏からも近く、ネイチャーガイドや歴史ガイドなど、ガイドは数多くいた地域です。そこで、伊豆半島ジオパークでは元々ガイドをしている方のうち、プロガイドにジオのエッセンスをガイド内容に加えて頂くようなガイド養成講座を開催したそうです。
つまり、ジオツアーで稼ぎたいガイドが養成講座を受けてツアーをするプロのガイドを養成するということ。
第一回目のガイド養成講座は推進協議会が行い、その合格者の中で、ジオツアーをプロベースで行いたいという高い志を持ったガイドが集まり、ジオガイド協会が設立されました。
そこでは主にスキルアップ講座や人材育成、ジオパークの情報提供などを行う一方、ガイドの派遣やガイドツアーを開催したり、ガイド養成講座やジオリアなど業務委託を受け、自主財源で運営しています。
推進協議会側としては、雇用に結びつくので知識や技能は養成講座を開催するなどしてサポートするけど、ガイドツアーは民間ビジネスだから推進協議会自らはタッチしない。一方、ガイド側としてはジオガイドだけで食べていけないし、売れるツアーを作るのに自信が無い人が多い。つまり、どちらも「売れる商品を作る能力が弱い」のが課題だと仰っていました。
最後に、全国のジオパークガイドの中で数少ない「ジオガイドで食べていける」伊豆大島ジオパークの西谷ガイドの例を挙げ、ガイドの仕事に対しての需要と供給のバランスの問題を指摘。
「ガイドの量産化」を進めても、伊豆半島のガイド全員が食べていけるのか?
中国のジオパークのように公務員待遇で雇用できないのであれば、西谷さんのように、ごく限られた真のプロガイドだけでジオガイドビジネスを確立していくのも一つの考え方ではないか。プロガイドを養成するのに、ビジネススクールのような高額だけど覚悟を持って参加するからこそモノになるプロガイドアドバンス講座があってもいいかもね、とアイデアも出して下さいました。
事例発表を聞いて私が感じたこと
ガイドの質の維持向上に必要なものとして、「プロガイドであること」が前提の上で、洞爺湖有珠山GPが行っている「火山マイスター」のガイド部隊のように少数精鋭で、プロで活動したい人はちゃんとガイド料が稼げるシステムを民間で構築していくのが、民間ビジネスとしてのジオツーリズムだと考えます。
両方のジオパークとも、認定に際しては、現場での試験がありますし、それまでも何回もハードルを設けています。そこもプロでやっていく、ガイド料を頂くからにはその対価に見合うガイド内容、安全管理を要求しているからこそ、ですね。
未知数のジオツーリズムですし、ビジネスとしてのジオパークガイドで食べている人は本当に両手で数えるほどしかいない現状では、ガイドを量産化しても結局、無償やわずかな日銭で行うガイドしか産まず、シニアガイドの生きがいにはなるでしょうけど、地域「経済」の活性化にはほど遠いような気がしてなりません。
(司会席からの様子)
当日参加して下さった推進協議会職員の皆様は、どう受け止めたのか。
司会席から見ていると、居眠りしたり、ムッとした顔をなさってたのは推進協議会から派遣された、恐らくボランティアガイドの方々。真剣に聞いていたのは、たくさんのガイドを抱え、ガイドのレベル差やガイド料が稼げないことに頭を抱える推進協議会のガイド担当の方でした。
次回のブログは、分科会後半のワールドカフェで出たキーワードを拾い出してみたいと思います。
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