適度な距離感を取れないとIターン者は来ない 〜9/16平田オリザ氏講演より
もう先週のことなのですが、脚本家・平田オリザさんのセミナーを聴講させて頂きました。たくさんの「へぇ〜」があったのですが、最も印象に残っている話を先にお伝えします。
こんにちは。兵庫県北部・豊岡市で宿専門の集客アドバイザー時々観光ガイドをしている今井ひろこです。当ブログへお越し下さり、ありがとうございます。
実は平田オリザさん、豊岡を改革しに来てはる!
ワタシ、テレビではお見かけてしていましたが、平田オリザさんを生で拝見するのは初めて。俳優さんだと思っていたら、劇作家で、そこに止まらず大阪大学の特任教授としてコミュニケーションについて研究されており、国語教科書の教材選定や執筆、授業の研究もされているとは知りませんでした。さらに、豊岡市と提携して教育&文化芸術改革を行っているなんて!今回、それもビックリでした。
今回は、著書「わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か?」(講談社現代新書)に沿った内容の講演を、世界的ハンガーメーカ−・中田工芸(株)の中田社長が主宰する「但馬コネクション」で伺いました。
(当日会場で購入。先に読んでおけばヨカッタ・・・)
Iターンについて語るオリザさん
地方の教育改革(コミュニケーションに着目した高度な教育)をサポートされている平田オリザさんは、移住政策についても地方自治体から意見を求められることが多いそうです。
若い夫婦に選ばれない自治体は寂れていく。子供を育てやすい、良い環境に移り住みたいと思っている。移住先を選ぶ理由は、実は雇用ではない。人手不足だから、選ばなければ雇用はある。若い人たちは「自分に合った仕事がない」と言うけど、ここに2つの問題がある。
1つは、その人は東京や大都市圏で自分に合った仕事をそもそもしていたのか?。自分に合った仕事をしていないから、就職したらブラック企業だと言う。
もう1つは、地方は自分に合った仕事がないのではなく、自分に合った仕事だけでは食べていけないということ。人口が少ないから。例えば、Webデザインの仕事だけでは月収7-8万円で食べていけないが、他に介護の資格を取って介護で7万とか、或いは農作業の手伝いで3万円とか現物をもらうとか、そういう複数の仕事を受け持つNPOを作ると、ちゃんとIターンの人でも食べていける。
自分に合った仕事だけでは食べていけないけど、でも複数掛け持ちすれば食べていける。地方は待機児童問題も無いし、家賃は安いし(→意外と但馬は高いのだけど)。
私が目から鱗がまず落ちたのは「自分に合った仕事だけでは食べていけないから、地方では複数掛け持ちしたらよい」という点。サラリーマン生活が長いと、副業禁止もあるので、二つ以上の仕事を掛け持ちすることは、「二兎を追う者は一兎をも得ず」社会から落ちぶれた、負けたことを意味すると勝手に思い込んでいる。けど私にあてはめて考えれば、アドバイザーの仕事もあれば、ジオパークであちこち講演させて頂いてるし。
なんだ、複数しても落ちぶれてない。むしろ、二兎を追う者こそ充実感を得る、かもしれない。劣等感が取れた瞬間でした。
オリザ氏が考える、Iターンが来ない理由とは?
この話に私は自身が思っていた違和感を代弁して下さった! と、思わず席を立って握手したくなりました。
Iターン者が移住しない理由は『教育と文化と医療』と答える人が殆ど。豊岡の場合は医療がしっかりしているので、教育、文化政策をきちんと整えれば、若い人たちが帰ってきて、JターンやIターンも起こる。そのときに問われるのはコミュニケーション能力。Iターン者はリベラルでオープンな町で無いと来ない。
Iターンは村八分のようにされるのがとても怖い。一方で、全部の行事に参加させられるのはすごく嫌。それはわがままだと思うでしょ?でも、Iターン者を本当に呼びたいと思うなら、このわがままが受け入れられないとダメ。適度な距離感を取れないとIターン者は来ない。
そういう町を作れるか? 新しい広場を作り、利益共同体でも地縁血縁共同体でもない、適度な距離感をとったまちづくりができれば、Iターン者やJターン者が増えていく。その時に大事なのは、異なる価値観を持った人を受け入れるコミュニケーション能力です。
昨今の古民家再生&移住事業をジオパークで行く先々などで見ていると、住むからには年中行事や日役などすべてを受け入れる都会の人で無ければ家を貸さないという地方もあって、ものすごい違和感があったわけです。都会の人も「地方が暮らしやすそうだし、自治体のフォローも手厚いし、住んであげるわ」的な人もいるでしょう。そういう価値観の違いがものすごく激しいミスマッチ状態が起こっていると、なかなか移住までに至らない。
なにせ大阪市内出身で住まいは明石市の畑もない場所にくらしていた私は、「日役」「隣保」という言葉を知らずに過ごしてきました。住民は自治会費や管理費を払い、仕事として作業する人がきちんといて、補修や木の剪定、掃除を行っているのです。町の行事も参加したければする程度で、独身でしたからほとんど参加せず仕事&ダイビング三昧。それで、こちらに嫁に来たときに驚いたのが、この2つだったのです。
隣近所は何をしている人か知らなくても不便無いところで育ってきた私がいきなり戸惑ったのは、人との距離感の濃さ。未だに戸惑いは続いていて、どうしても参加しなければ村八分にされるような行事以外は出ていません。主人が出てもOKなものはできるだけお願いしています。主人はそれを当たり前とする文化で育ってきていますから、何の違和感もなく作業に出てます。
平田オリザさんはこの価値観のずれを「コンテクストのズレ」と表現しておられ、先に紹介した同氏の著書「わかりあえないことから」でもメインテーマとして置かれています。主人がそのことをブログに書いているのでご覧下さい。
※劇作家&豊岡市参与平田オリザさんのお話を聞いて教育・地域振興・ビジネスに演劇はマストと思った件
分かってくれている方が私の違和感を表現して下さったことがなぜか嬉しくて書いてしまいました。決して、田舎はこれだからダメっていってるんじゃないんです。適度な距離感で人付き合いをさせてほしいと思っているだけなのです。伝わったかなぁ・・・
☆★☆・・・☆★☆・・・☆★☆・・・☆★☆
地方の小さな宿と店の集客サポート
コムサポートオフィス 今井ひろこ
〒668-0022
兵庫県豊岡市小田井町5ー3フラッツオダイ201
TEL&FAX 0796−24−3139
「コムサポートオフィス」 で 検索!
Mail: info@@@imaihiroko.com (@は一つにして下さい)
☆★☆・・・☆★☆・・・☆★☆・・・☆★☆
今井 ひろこ
最新記事 by 今井 ひろこ (全て見る)
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(5/n) 選ばれるだけの理由が無ければ売れない - 2019年1月17日
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(4/n) 着地型観光で選ばれる商品とは? - 2019年1月15日
- 第6期・南紀熊野観光塾「塾生講習」に参加して(3/n) ターゲットを一つに絞る - 2019年1月14日
関連記事
-
-
コミュニケーション能力1級セミナーを受講してきました<2>
昨日のブログの続きです。コミュニケーション能力一級コースを受講して学んだことをお …
-
-
「一社がどんなに儲かっても地域は豊かにならない」〜山田桂一郎先生の講演から
今日も1/23、24に豊岡市内で開催された山田桂一郎先生の講演での気づきをブログ …
-
-
成功者には共通点があった!セミナー受講で成果を出す人が行っていたこととは?
先日から受講を始めた、福島正伸先生の「究極のコンサルタント養成講座」でのお話の中 …
-
-
言葉よりもジェスチャーで!☆香美町商工会インバウンドセミナーを聴講
2月17日に香美町商工会本所にてインバウンドセミナーが開催されました。5年前から …
-
-
経営者が人を育てるということ 〜福島正伸先生のセミナーから
先日から受講を始めた、福島正伸先生の「究極のコンサルタント養成講座」でのお話の中 …
-
-
「インバウンドは、何人に一人が来日しているか皆さん把握してる?」藻谷浩介さんの講演を聞いて〜てしかが観光塾2017
兵庫県北部・豊岡市で宿専門の集客アドバイザー時々観光ガイドをしている今井ひろこで …
-
-
一生ラクしたいは『地獄の始まり』?! 〜福島正伸先生のセミナーから
昨日はお休みしましたが、一昨日から始めた福島正伸先生のセミナーシリーズ第三弾! …
-
-
自立型問題解決法を具体的にやってみよう! 〜福島正伸先生のセミナーから
福島先生のセミナー「究極のコンサルタント養成講座」では宿題が毎回出るのです。今回 …
-
-
「私を見て!」という生き方をリーダーはしよう 〜福島正伸先生のセミナーから
福島正伸先生の「究極のコンサルタント養成講座」セミナーシリーズ第四弾! セミナー …
-
-
充実感を得るための6つの要素とは? 〜福島正伸先生のセミナーから
「究極のコンサルタント養成講座」という福島正伸先生のセミナーで伺ったお話からお伝 …